オフシーズンの仕事

ロードバイク

シーズン中にしっかり活躍できるようオフで厳しいトレーニングを重ねる。それがプロスポーツ選手の共通事項。誰に言われるでもなく、自ら計画を立て、粛々とスケジュールを消化する自己啓発、自己管理の世界。ガイドもその点は同じ。一瞬の感動を創り出すために一年をかけて準備をする。それがプロガイドの仕事。オフシーズンは休み?と思われがちですが、シーズンがオフなだけで仕事が休みなわけではありません。

海旅

ところでガイドさんて冬はなにしてんですか? ゲストからよくある質問。そんな時は決まってこう答える。「遊んでます」説明するのがめんどくさい。という部分もありますが、実のところガイドは「遊ぶこと」が仕事なんです。したがって遊びに使ったお金は全て経費として認められる公認の遊び人。ワイルドだろ?

海旅
人は遊びを通して成長し、旅を通して多くを学ぶ。
人が持つ情報の価値は遊びと移動距離に比例する。

それはさておき、遊びといってもオフシーズンにおける僕たちの遊びは娯楽ではなく本気の遊び。ニュアンスとしては「遊行」といった方が近いかもしれません。置き換えるなら、日々のツアーは安全性や娯楽性を追求した「遊戯」(レクリエーション)なのに対し、オフシーズンにおける遊びは「遊行」。つまり、安全が保証されていない環境の中を旅する冒険に近い遊びです。なぜそれが必要か。

時に危機迫る環境の中で感性は磨かれ、失敗を繰り返す中で知恵と法則を得る。それが結果として判断力を養い、危機管理能力を高めることに帰結する。

要するに、ソロで旅をしないと海や自然の本当の怖さはわからないし、本当の実力は身につかない。また、冒頭「ツアーは氷山の一角である」と書いた通り、オフシーズンはツアーをしないだけで「安全と娯楽の追求」 というミッションに終わりはないのです。断じて、海は教科書では学べない。海を旅すること。自分の力で漕ぐこと。経験を積み重ねることでしか海を理解することはできないし、それがミッション近づくための最大の方法なんです。

余談ですが世間ではこうした遊び人のことを「遊行者」または「世捨て人」とも言いますが、かの「空海」や「仏陀」こそが元祖遊行者の先輩でもあります。いつの時代も文化は遊びからはじまり、遊びが文化を創る。人は本来、遊びという行動を通して多くを学び成長する霊長類(ホモ・モーベンス)なのだー。

と、遊ぶことを正当化してみましたが、こればかりは事実だから仕方がない・・・。

トレーニング

カナディアンロール
ひっくり返って起き上がる技術 カナディアンロール。これができるようになると、水への恐怖心が無くなり、余裕が生まれてくる。ガイドには必須技術の一つ。

ガイドが身に付けていなければならない海での安全技術には、基礎としてのパドリング技術の他に「リカバリー技術」や「レスキュー技術」ならびに「ナビゲーション技術 ※1」 などがあります。

ちなみにリカバリー技術とはひっくり返りそうになった場合や、ひっくり返った場合の回復技術のこと。レスキューはその名の通り、ひっくり返った人を助けたり、風で流されてる人をロープで牽引したりする救助技術のこと。いずれもガイドにとっては必須技術であるため、定期的に練習を行っています。

しかし、練習は主に静水域で行うことが多いですが、得てして救助が必要な場面というのは緊張感がピークに達するような「時化」の中においてです。そして、危機迫る状況の中ではマニュアル通りにはいかないこともあります。そこで重要になるのは、いざという時の答えを日頃からいくつ用意しておくか。そのためにも「あらゆる状況の海を漕ぐこと」が咄嗟の状況に対応する一つの心構えとなります。もちろん、過酷な状況が予測される場合にツアーを催行することはありませんが、予期せぬことが起こりうるのが海の世界。よって、不足の事態に備えるべく、限界地点を知っておくことや、バリエイションをいくつも用意しておくことが非常に重要な要素となります。

※1 「ナビゲーション」については → 「カヌー航海術」に詳しく記載しています。

フィールドワーク

ガイドは時々の天候やお客様の経験値など、状況に応じて「ベストフィールド」を提案することが仕事でもありますが、シーカヤックにおけるベストフィールドとは「その日、最も安定している海域」のこと。というわけで、フィールドを熟知するべくフィールドワークは欠かせない作業。というか、これこそがガイドの根幹を成す仕事(ライフワークみたいなもの)で、ツアーは断片的な枝葉に過ぎません。

また、自然は深くなるほど美しくなり、生態系の豊かさも増しますが、同時に自然が深くなるほど危険性も増す。という相反する性質もあります。よって、ツアーコースを開発する上では上陸できるポイントや予備ルート、海が時化た場合のビバークポイントなども予め知っておく必要があります。加えて、海側からの視点だけではなく、陸からアクセスできる上陸ポイントや避難ルートを探しておくなど「陸側からの視点」を持っておくことも危機管理上重要です。というわけで、漕ぐだけではなく、時には山中を歩き回ったり、いろいろな方向から検証を重ねることも仕事のうち。

フィールドワーク
水の透明度が高い冬場は海底が透けて見える。植生を見ればそこがどんな状態なのかが見えてくる。むろん一回漕いでわかることもあれば、同じ場所を何百回と漕ぐことで見えてくるものもある。「定点観測」を繰り返すことが「安全と娯楽の追求」というミッションい近づくための最大の方法論。

また、歩き回るついでに地質や植生などを観察したり、海に潜ってみたり、注意深く観察していると、次第に海の状態や生態系の法則のようなものも見えてきます。例えば、海上で「心地いい」と感じる場所の水面下には生きものが多いですが、「なんか嫌だな」と感じる場所の下には生きものたちの姿は少ないです。米や野菜も同じで「おいしいもの」には速攻で虫が入りますが「おいしくないもの」には入らない。自然は実に正直です。

つまり、「美しい」あるいは「おいしい」と感じる直感的な感覚は本能的なものであり、誰もが感じる共通事項。よって、そうした美しい場所を探し歩くことがここでのテーマ。尽きるところ、自然の中を旅することは 「本当の豊かさとはなにか」 を探し求める旅なのだと思う。

レストア

大工が道具を大切にするように、ガイドにとっても道具は仕事をつくりだす大切な相棒。と同時に人の命を預かる大切な道具でもあります。また、ツアーは道具があってはじめて成り立つもの。というか、本当のことを言うと、ガイドは使い方や漕ぎ方を教えているだけで、海を往く楽しさを伝えているのは「カヤックそのもの」なんですよね。というわけで、オフシーズンは日頃の感謝を込めてピッカピカにRe-Fine!

シーカヤック
シーカヤックはいわば「一人船長」でもありますが、他に助けてくれる人がいない海上において、船長はあらゆる状況に対応できる何でも屋(技術屋)でなければなりません。舟や道具の修理も仕事の一つ。

ちなみに、ツアーで使ってるカヤックはFRP製のものが主体ですが、「砂浜」は言い換えれば「サンドペーパー」でもあるので、船底が徐々にすり減ってきます。更に、岩にぶつかったり、暗礁に乗り上げたりしてヒビが入ったりすることも。もちろんダメージが大きい場合はその場で応急処置を施しますが、大がかりな修理は日数がかかるのでオフシーズンにまとめて行っています。

なお、修理や補修に関する技術的な内容はマニアックすぎるので省略しますが、一つ一つの作業にも細かい技術を要します。総じて、南極点への到達を競った「アムンセンとスコット」の教訓に習えば「手先が器用なこと」はガイドにとって重要な資質の一つかもしれません。加えて、そのへんにあるものを利用して応急処理を施したり、なにかを創り出す。といった応用力があることも重要な要素かと。

WEBデザイン

ホームページ
オーサリングの定番ソフト Adobe Dreamweaver
HTMLやCSSは覚えるまでが大変。最初は海を渡るのと同じくらい果てしない距離感がある。その距離を縮める方法はただ一つ。まず、やってみる・・・。

どれだけ素晴らしいアイデアや技術を持っていたとしても、誰かに伝えなければ絵に描いた餅・・・。

というわけで、ホームページの制作も自分たちで行っています。もっとも外注すれば手間は省けますが、長い目で見れば自分たちでノウハウを蓄積した方が何十倍も得策。なぜならWEBメディアはつくって終わりではなく、つくってからはじまる「育てるメディア」だからです。

更に、自分たちでできるようになれば楽しいし、可能性も広がります。また、アイデアは頭よりも手がつくり出すことが多いし、現場で思いつくことが多いので、思いついたアイデアを直接反映させることができるメディアがあれば、スピードも早いし結果もすぐ出るから、そのぶん一歩前進することができるはず。

なお、WEBデザインができなくてもガイドはできますが、「自らの仕事(ツアー商品)を創り出すこと」までを含めてがプロガイドの仕事。というか、これができるよういならないと前には進まないし、近道しようと思っても袋小路に迷い込むのが落ち。結果を出したかったら迷わず王道を行け。それが最短ルート。

総じて、ガイドはすべてをオールマイティーにこなす何でも屋。ぶっちゃけガイドができたらなんでもやれると思います。もちろん新人ガイドにはそこまでのスキルは求めませんが、(希望する人にはWEBデザインも教えます。)なんでもやれるようになれば自信もつくし不安もなくなりますね。要するに、身に付けなければならないものは、何にでも応用可能な普遍的な技術です。

ワークアウト

ライフスタイル
瀬戸内の一番の魅力は、超ドライな気持ちいい風が吹くところ。この風を最大限に楽しむ方法のベスト3。カヤッキング、トレッキング、サイクリング。共に風を楽しむスポーツ。

なにはともあれガイドは体が資本。
というわけで、日々の運動も仕事のうち。

その点、小豆島は海から山まで鍛え処が満載。
意外に知られてませんが、島の7割は山林が占める
アップダウンが激しい坂道だらけの山岳島。
つまり、山があるということは
登る楽しさがあり、下る楽しさがある。
トレッキングにサイクリング。
やらない手はない。

ガイド業とはライフスタイルの追求でもあり、
応用でもある。

読書

海旅
時には無人島で本を読む。一般の人にとってのカヤックは非日常を楽しむレジャーかもしれないが、ガイドにとってはチャリンコと同じ日常的な足であり、海もまた日常的な遊び場である。

ゲストと半日や一日を共にするガイドは「会話を引き出したり楽しむこと」 も大切な仕事。もっとも、島のことや地域のこと。海のことや自然のこと。その他、あんなことやこんなことを、おもしろおかしく解説しながら楽しんでもらうことが仕事と言えば仕ですが、人によっては「たわいもないアホ話し」 でツアー終了。なんてこともしばしば・・・。

いずれにせよ、話しの引き出しは多いほどベター。よって想像の翼を広げるべく読書も大事な仕事。旅することは更に大事な仕事。ならば、旅しながら本を読む。本を読む場所を探して旅をする。なんてこともあり。ぜいたくな時間の使い方を提案することも仕事の一つ。

食と料理

ラタティーユ
裏の畑で採れた夏野菜を使ったラタティーユ。ツアーの献立は季節や時々の気温などにより様々。カレーにラーメン&チャーハンといった定番から、地元食材を使った海鮮系のイタリアンに鉄鍋料理、寒い時期は鍋物、キャンプでは焚き火料理などなど

「旅」は「食べ」が語源とも言われますが、旅の醍醐味の一つはなんといっても新鮮な地元食材を使ったご当地飯を食べること。

ならば、限りなく新鮮な料理をつくってさしあげましょう!ムール貝を現地調達して焚き火を火種にスキレットでパエリアをつくる。素潜りで蛸を捕まえ、搾りたてのオリーブオイルでカルパッチョ。秋はエギングしてその場でイカサシ。なんてことも島だからできる野外調理法の一つ。もっとも、こうしたことは時間のあるキャンプツアーでないとできませんが・・・。

なにはともあれ「美食を極めること」は島暮らしの特権的な楽しみの一つでもあると同時に、島で生きていく上では非常に有効かつ現実的な外貨獲得の手段。転じて、食を極めておけば、外食産業に応用できるし、つぶしもききます。

いずれにしても、料理のバリエイションを増やしたり、腕前を上げたりすることはもちろんと、季節毎にどんな食材があるのか、どこで調達できるのか、どんな方法で食べたらおいしいか。などなど、食材の調査研究は大切な仕事。更には、食材の生産からサービスの提供まで、ワンストップでサービスが提供できるところが都会では絶対に真似のできない島ならではのアドバンテージ。ゆえに日々の探求は欠かせません。

英会話

英会話
外国人が混じるとツアーは俄然盛り上がる。なんか、外国に来たみたーい!といった異国気分が味わえる。

英語も覚えなきゃ。と毎年のように言ってますが、いつになったら本腰が入るのか、未だ迷走中・・・。

にも関わらず、ここ数年は外国人観光客も増加傾向。今のところは昔覚えたデタラメ英語で凌いでますが、英語対応&グローバルサイトにしたら爆発的に増えることは間違いないでしょう。

というか、地方における外国人対応は今後の重要課題。人口減少と共に若者が減りゆく中で、国内需要は先細りの一方。ついでに若者の海離れも加速する一方。対して外国人観光客は増加の一方。

10年後は外国人観光客が本流かも・・・。