NPO(法人)の基礎知識

NPO法人(特定非営利活動法人)の基本概念や株式会社との違いなどを解説しています。

7. NPOに期待される第三の領域


シニア世代のセカンドステージとして

近年、団塊世代の定年退職問題を受けて、NPOに脚光が集まるようになってきました。その理由は地域の様々な問題を解決するための新たな行政サービスの担い手として。ならびに社会経験豊富なシニア世代の新たな生き方、働き方、働く場、いわゆるセカンドステージとしてのNPOに期待が集まっているためです。日本はこれから構造的な高齢化社会に突入していきます。特に団塊世代を中心とするシニア世代が定年退職を迎えることは、これまで日本経済を支えてきた最も人口の多い世代が、分母から分子に入れ変わることを意味します。更に2006年を折り返し地点として減少傾向へと傾いた日本の人口問題なども含めて、構造的な高齢化に伴う社会不安は避けては通れない大きな問題であり、課題の一つです。そこで、それら様々な不安や問題を解決するための新たな枠組みとしてのNPO、また社会経験の豊富なシニア世代の活躍の場としてNPOに期待が寄せられているのです。

行政でもなく、私的企業でもない中間の領域

また、NPOが発展していく土壌は、前述したアメリカの例と同じく、国の財政赤字と経済の低滞を打開するために唱えられる 「小さな政府論」 と、それに伴う規制緩和の波です。歴史上多くの福祉国家が同じような政策を唱え、低成長社会を生き抜く切り札として、市場の他に、一部の非営利市民活動を代替案として盛り込みました。 日本でも先の小泉内閣からはじまった 「小さな政府」 づくりに向けた構造改革もそれと類似しています。その中で語られた国の借金の8割ともいわれる地方の財政赤字。そこをスリム化させるべく掲げられたスローガン 「民間に出来ることは民間に!」 これまで行政が担っていたサービスの一部を民間に委託することで政府の負担を軽くすると同時に、民間の活力をテコに地方の自主独立を図る。つまり政府の補助金に依存しない健全な地方財政基盤の構築なくして、国家の再生は不可能という考え方です。

一方、地方においては年々財源が縮小する中において、多様化する個々のニーズに応えるだけの公的サービスを行政だけが担うことは限界があるとされ、加えて税金によって賄われる政府や自治体の活動は一律公平が原則となるため、原則的に個別対応は難しいという側面もあります。一方、企業セクターの限界もあらわになってきました。過去、介護保険法の成立と共に多くの民間企業が新規参入を果たしましたが、多くの企業が早期撤退を余儀なくされました。更に生き残りをかける中で偽装事件も発生するなど、効率を優先する企業構造の歪みが表面化してきました。つまり、高齢者一人一人のニーズに合った介護サービスの提供において、そこには効率やコストでは計ることのできない、助け合いの精神に基づく、市民参画型の考え方とシステム。経済的利益の追求ではなく、社会的利益を追及する 「市民公益」 のシステムが必要だったのです。行政・自治体でもなく、私的企業でもない中間の領域。その隙間、両者の穴を埋めるのがNPOに開かれた活動領域、NPOに託された第三の領域でありミッションなのです。

具体的な領域としては福祉系を中心に、医療、社会教育、環境問題、国際協力、教育問題、学術文化芸術分野、地域安全、まちづくり、情報化社会への対応、科学技術の振興、スポーツの振興、職業能力の開発と雇用機会の拡充、そして災害援助などNPOに開かれた分野は多岐に渡っています。