NPO(法人)の基礎知識

NPO法人(特定非営利活動法人)の基本概念や株式会社との違いなどを解説しています。

3. NPO法人と株式会社の違い

事業目的

NPO法人と株式会社の大きな違いは 「ミッション」(事業目的または社会的使命)の違いにあります。株式会社のオーナーは言わずと知れた株主ですが、会社は株主に対して 「経済的利益」 を追求することが原則的なミッションとなります。これに対してNPOは地域社会に対して 「社会的利益」 を追求することが原則的なミッションとなります。ところが、NPOは株式会社のようにオーナーを特定することができません。これは地域社会に対しての社会的利益を追求するための法人であり、私的な利益を目的としていないためで、強いて言うならオーナーは地域社会。あるいは地域社会によって選ばれた理事会と考えることもできます。従って、NPOは事業を通して地域社会のために貢献すること。すなわち 「社会的利益」 の追求がミッションとなり、儲かった収益は地域社会(オーナー)へ再配分することが原則となります。

まとめると、オーナーの経済的利益の追求を行う株式会社に対して、地域をオーナーとする社会的利益、もしくは地域の経済的利益を追求するのがNPOといえます。収益性が低いと判断される事業であってもNPOが事業を執行するのはこのためで、収益性が低くても社会的に必要な事業ならば、別途資金を調達して事業を執行することがある。そこがNPOと株式会社の大きな違いといえます。

意思決定

今後は株式会社とNPOのハイブリッド化が進む

一般的に経済的利益の追求をミッションとする株式会社は、株主利益の追求を意思決定の原則とし、お金を軸に、マーケットに従い意思決定を下します。対して社会的利益の追求をミッションとするNPOは、ミッションを軸に、ミッションに従い意思決定を下します。つまり、マーケット主義を貫く株式会社に対し、ミッション主義を貫くNPO。これが株式会社とNPOの二つ目の違いとなります。

ただし、最近では企業の偽装問題や地球温暖化などの影響から、環境問題をはじめとする地域社会に対する配慮や、品質、原材料、製造工程なども含めた情報公開、及びISO基準などによる情報の透明性といった 「企業の社会的責任」 (CSR)が大きく問われていること。加えて 「結果主義」 から 「プロセス主義」 へとシフトする世界レベルでの評価基準の転換。また、それらの背景として社会的責任投資(SRI)などの増加による市場構造の影響から、これら社会的責任を果たす活動をビジネスチャンスと捉える動きも広がっています。つまり、「企業市民」としての企業の在り方を模索するNPOのような考えをもつ企業、逆に企業のようなNPOが増加傾向にあるため、上記の原理原則は一概なものではなくなりつつあるようです。

このようにNPOと株式会社は、利益分配方法を除いてもはや同一レベルにあると言えます。その他、法人設立時の資本金が1円か0円かの違いだけで、誰でも簡単に法人を設立し事業を始められるという点でも同じです。またNPO先進国のアメリカに目を向けてみれば、NPOだった研究機関が、公的資金をベースにインキュベートした後、ベンチャー企業に変身してIPO。なんてケースも日常のようですし、その逆もあります。というわけで事業ミッション、または関わるマーケットによってNPOにするか株式会社にするか、柔軟に対応させていくといったハイブリッドな考え方がこれからの企業やNPOの在り方のようです。

NPO法人か株式会社か

地域に根ざした会社を創業する時、NPOにするか株式会社にするか迷うところです。が、結論から言えばどちらがいいかというよりは、理念や考え方といった中身の方が問題であり、どういう形で地域に貢献するのか、どういう事業を持って地域社会に貢献したいのか。そこが一番重要な部分だと思います。いずれにしてもNPOも株式会社も営業収益による税率は同一ですし、寄付金を除いては、税制上の違いはありません。したがって、事業内容に沿って選択すればいいと思います。ただし、NPOと株式会社には会計上の違いがあります。一般的に民間企業はゼロを増やしていくことがミッションですが、NPOの場合は公益法人の会計を応用したもの。つまり、行政の仕組みと同じで、先に予算があって、それを消化していく予算消化型の会計がベースになっています。要するに考え方が逆。したがって、スピードを重視する場合や収益事業に特化したい場合。事業を拡大し、雇用を増やすことを持って社会還元したい場合は株式会社。営利を主とした目的とせず、地域に必要な事業を遂行する場合。あるいは行政と連動した事業を行う場合や公共的な事業を行うための受け皿として機能させたい場合はNPOという選択になるかと思います。