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2010/07/19

瀬戸内国際芸術祭2010 開幕

瀬戸内の7つの島を結ぶ『瀬戸内国際芸術祭2010』が7月19日(海の日)から始まりました。開催期間は10月末までの100日間。開催地は現代アートの島として有名になった直島をはじめ、小豆島、男木島、女木島、かつて産廃問題で揺れたた豊島、そして戦後ハンセン病の隔離島だった大島、そして犬島(岡山)の7つの島。

瀬戸内国際芸術祭

海の復権

芸術祭のテーマは『海の復権』。かつて日本のパイプラインだった瀬戸内海を。日本という島国が発展するに至った航海術が磨かれた瀬戸内海を。そうした日本の歴史的断片が封じ込められている瀬戸内の島々を今一度しっかり見てもらい感じてもらおう。加えて数百年に渡り粛々と受け継がれてきた島の生活文化、海を越えて伝えられてきた伝統文化をしっかっり見てもらおう。そのきっかけづくりとして世界中からトップアーティストが集い、地域の人々と共に作品をつくる。これまでの地方イベントとの決定的な違いは、行政がやるのではなく、企業がやるのでもなく、行政や企業、アーティストやボランティア、そして地域住民が主体となってつくりあげる『協働』という新しい仕組みです。果たして国籍や言葉、国境を越えて共に働く『協働』という前代未聞の取り組みは、過疎の島にどんな未来を描くでしょうか。

ARTで海を開く。そして島を開く。この試みの根底にはいくつかの希望が込められています。一つ目は島に対する価値観の転換です。戦後、文明に疾走した時代の中で、『島は海によって閉ざされた空間』であるという認識を多くの人が持つようになりました。結果、島には都市から大量のゴミが持ち込まれたり、更には罪の無い人々を島に閉じ込めたりもしました。確かに大陸から見れば瀬戸内の島は小さな孤島。けれど世界から見れば日本も小さな島なのです。更に資源の無い日本と叫ばれた時代がありました。しかし日本が世界に向けて開かれた根本は、海という大きあな資源があったからではなかったか。海という物流拠点と航海術があったから開かれた島。それが島国日本の姿であり、海と共に生きてきた我々日本の文化なのです。日本で最大の閉鎖性海域である瀬戸内海は見た目とは裏腹に、世界有数の潮流海域です。ここで磨かれた海賊文化と航海術によって日本は世界に開かれていきました。つまり、島は海によって閉ざされた空間なのではなく、海によって開かれた空間だったのです。

また、海という最大の交通インフラから、鉄道、道路、そして車社会とシフトしていった時代の中で、我々日本人の記憶から消えかけてしまったものがあります。それは海から見える風景です。本来、海に囲まれた日本の海岸線は起伏と変化に富んだ感動的な美しさがあります。しかしながら、こうした風景は道路からは見ることができません。通り過ぎていくだけの風景です。小さな島がゆっくりとゆっくりと大きくなり、陸に近づくにつれ、美しい海岸線が見え、そして人々の暮らしが見え始める。海を行く風景と陸から見える風景には見え方に大きな違いがある。海を旅すること。島を旅するということ。それは海によって開かれた島、美しい日本を再確認する旅であり、我々日本人の記憶を取り戻す旅になるのかもしれません。

『海の復権』 かつてシーボルトが世界に伝えた美しい瀬戸内海。その海を一個人の旅行者が世界に伝える時代になりました。世界と過疎の島を繋ぐARTな試み。大航海時代再び。第三次グローバリゼーションの開幕です。 

 

Text: 連河

 瀬戸内国際芸術祭2010 公式サイト